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あまりにも更新が出来ていないので、オフ本から持ってきました。
本編ネタのロク刹です。
「×××」の冒頭文より。
―――
キス、された。
刹那は半ば放心状態で、無重力を漂う。思考さえも、宙に浮いているようだった。なんて不安定で。壊れやすくて。脆い、感情。自分にこんな一面があったとは、思いもしなかった。もっと強くて強くて強くて、マイスターとして相応しい人物になりたいと。そう、願って生きてきた。それが、一瞬のキスで崩された。初めて触れた女性の唇は、彼の唇よりも、柔らかかった。それが、悔しかった。
「せーつな」
刹那の心も知らず、声は響く。刹那は唇を拭っていた手を下ろすと、静かに振り向いた。そこには、自然と心を開いてしまう、そんな存在がいる。
「ロックオン…」
「なんだか、本当に刹那って顔してるな」
「え?」
「刹那、一瞬の顔。だけど、なんだか脆そうだな」
ロックオンは笑う。彼らしい、優しい、穏やかな笑顔だった。心に出来ていた蟠りが、崩れていく。
「刹那、キスされた」
電子的な声が響いた。慌ててロックオンは声の元を塞ぐ。ロックオンの腕の中でハロはパタパタとオレンジの耳らしき部分を動かしていた。元気よく跳ね回りたいと、口が開く。
「刹那、刹那」
「わーかったって!ハロ、少し待ってな?」
その行動は誰に似たの?
だなんて、聞きたくなる。刹那を求めてやまないハロ。なんだか子供のようで、ロックオンは笑った。ハロは、まだ口を塞がない。
「兄さん!兄さん、忘れてた」
「あー、あれね」
「兄さん…」
「ハロ、愚痴はあとでゆっくり聞いてやるから。俺には、ハロ以上にもっともっともっと大切な奴がいるの。まあ、そいつが傷ついているかどうかは知らないけど、話さないといけないの。わかる?」
「わかる。ハロ、わかる」
「えらい、えらい」
ハロを撫でるロックオンの指先に、初めて嫌悪感を憶えた。刹那はロックオンに背を向ける。違う。違う。刹那は、暗い宇宙に浮かぶ自分の姿を見ていた。
「さて、こっちのやんちゃ坊主はどうした?」
「やんちゃじゃない。坊主でもない」
「はいはい」
ロックオンは小さく笑って、刹那の髪を撫でる。指先に、嫌悪感。刹那は、咄嗟にロックオンの指を振りはらった。
「それは、それは、同じだ」
「え?」
「ロックオンは、誰にでも、それだ」
ハロに、嫉妬した。なんて、情けない話。悔しくて、口に出すのも、本当は嫌だ。だから、心の中で皮肉を言う。ハロを撫でるのと同じ指先で、自分を撫でないで。愛さないで。触れないで。全てが、自分を狂わせる。
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