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「追伸、わからない貴方へ」(○・アレティエ)

あまりにも更新が出来ていないので、オフ本から載せて見ました。
ハレルヤ絡みのとりあえずアレティエです。
「追伸、わからない貴方へ」の冒頭文より。

―――

 正直、ティエリアが普段何を考えているのか良くわからない。クッションを抱きしめ、アレルヤは一人頭を悩ませていた。肝心の部屋の主は最新の雑誌が宇宙船内でも販売されたと聞いて、飛び出していったっきりだ。まだ帰ってこない、ティエリア。彼は、何を求めているのだろう。カード一枚を手に去っていった彼を思い出す。アレルヤは、クッションに顔を埋めた。そうしていると、やがて声が響く。
「やるせねーの」
「煩い、ハレルヤ」
 アレルヤは顔を上げる。隣には、分け目を変えたもう一人の自分がいた。平然とティエリアのベッドに腰掛け、足を投げ出すハレルヤ。自分が自由のために作り出したとはいえ、なんていう姿だろうか。自由奔放。いや、何かが違うような気もする。アレルヤの瞳に、ハレルヤは気づくと不敵に笑って見せた。
「好きな奴ぐらい、落としてみろよ」
「あのね、好きな奴って」
「ティエリアの事、だーいすきなんだろ」
「ご指摘いただかなくとも、その件に関しては既にティエリアも承諾済みです」
「あれだって、俺が背中を押してやったもんじゃねえか」
「…仕方が無い」
「いつもそれだよな」
 ハレルヤは豪快に笑う。アレルヤは、小さくため息をついた。確かに、ティエリアと自分はハレルヤの仲介があって恋人同士になった。仲介、といってもハレルヤの存在は自分の中でしか認識できないものであると思っているアレルヤ。ハレルヤはあらゆる姑息な言葉で、アレルヤを告白させただけだ。まあ、アレルヤもティエリアが好きで好きで困っていたのでその言葉に乗ったというのもあるのだが。アレルヤはクッションをハレルヤに投げつける。それは、ハレルヤの存在をないものとして通り過ぎ、ティエリアのベッドに落ちた。
「何がしたいんだか」
 呆れたように、ハレルヤは笑った。
「なあ、もっと豪快になっちまえよ。もっともっと、貪欲になっちまえよ。お前だって男だろ?溜まってるもんとか色々あんじゃねえか?」
「不謹慎」
「その口調、ティエリアそっくりだぜ?」
「…あのね、確かに僕はティエリアが好きだけど、その、キスしてるだけで幸せとか、抱きしめられるだけで嬉しいとか、ここにこうしていられるだけでもありがたいとか、そんな風に思うだけで十分だというか」
「長い。もっと簡潔に言えよ。つまり、ティエリアが好きで、もっともっと自分のものにしたいんだろ」
「違うっ!」
 かっと頭に血が上る。もう一人の自分は煩悩の固まりか。そんなことさえ思ってしまうほどの、ハレルヤの言葉。アレルヤはもう簡便ならないとティエリアのベッドに身を委ねた。仄かに、ティエリアの香りが鼻につく。これは、抱きしめたときと同じ匂い。体温が上昇するのが自分でもわかった。ハレルヤはそんな自分の姿に笑っている。
「お若いことで」
「同い年だ」
 顔を背けたアレルヤに、ハレルヤは笑った。その時、空気が抜けるような音が聞こえ、振り向けばそこには雑誌を手にもったティエリアの姿があった。
「誰か、いたのか?」
「え?」
「話し声が聞こえた」
「…あ、あ!ほら、通信!なんだか、ロックオンが整備について聞いてきてさ」
「それだけか?」
「うん」
 笑って誤魔化すアレルヤに違和感を覚えつつも、ティエリアは買ってきたばかりの雑誌を本棚に入れていく。几帳面なティエリアは、すぐに整理をしたがる。それは良いことなのか、はたまた。まあ、その辺りはハレルヤにとってはどうでも良いことなので、とりあえず買ってきた雑誌の背表紙だけを確認した。
「ロボット工学?ティエリア、ハロでも作るの?」
「いや、少し気になることがあるだけだ。第一、マイスターとして機械に強くて損をすることはないだろう」
「そうだね」
 ティエリアの簡潔な答えに、アレルヤは笑う。
 よく、なんでティエリアを好きになったのかと、聞かれる。けれど、答えなんてアレルヤも出せなかった。気づけば好きになっていた。キスしたいほど、抱きしめたいほど、愛したいほど。好きになって、心が奪われていた。
「ティエリア、他には何か買ってきたの?」
「いや、特には。ああ、これ」
「え?」
 差し出されたのは、暖かいココアの入った缶。まだ、少しだけ熱くてアレルヤは驚きから缶を床に落としてしまった。その姿が面白かったのか、ティエリアは苦笑する。
「大げさだな、お前は」
「うーん。予想外というか」
 アレルヤは笑う。ティエリアが好きなのは、例えば、こんなとき。ふとした時に見せてくれる、自分を労わるような笑顔。優しくて、大好き。
「熱さにも、ティエリアが買ってきてくれたことにも、驚いたなあ」
「お前の中で俺はどんな存在になってるんだ」
 呆れたように言うティエリアに、アレルヤは笑う。 

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