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空、空、空。
空はいつでも自分を見てると、誰かが言っていた。
しかし、その空と呼ばれる部分に自分は今いる。
それが、とても矛盾のようで、はがゆい思いを抱かせた。
刹那は一人、宇宙を見つめる。
いつか、宇宙を空と呼んだ人がいた。
「また、こんな所にいたのか」
「…悪いか?」
淡白な声に、淡白な声が返る。
寂しさなど感じさせない。
ただ、言葉だけを伝えるという声の役割をきちんと果たしている。
刹那は振り向いた。
真っ赤なマフラーが、揺れた。
「ティエリアは、どうしてここに?」
答えない、ティエリア。
気まぐれな猫と呼ばれる自分だが、ティエリアだって負けてはいない。
刹那は宇宙へと自分を溶かした。
空に滲んだ、焼けた雲。
内に秘めた願いが、いつまでも焦がしている。
煙が昇る。
さらさらと、自分の前で風化していく。
名前を捨てたのはいつだっただろう。
この身一つで生きていくと決めたのは、いつだろう。
「…使命。…果たしていくだけ」
「何だ、突然」
紅い、紅い、紅い。
ガンダムから出るGN粒子は、紅い。
空を紅く染める。
天気ではない。
自分たちが、空を紅く染める。
そして、地上までも赤く染める日がいつかくるのだろうか。
とても想像できないが、予想できる未来に刹那は手を握り締める。
「俺は…、俺は、マイスターだ」
「そうだな」
「だから…」
「だから、俺も、使命を果たす」
ティエリアが答えた。
そっとどこかで、今も現実が消えている。
それでも、自分はここにいるという事実。
何も変わらない。
知ろうと思わなければ、何も変わらない。
夕日のようにお互いの瞳が、紅く輝いていた。
刹那はガラス越しに宇宙を見る。
「空が、広がっている」
「…包まれている」
「ああ。そんな、感じだ」
自分が紅く染めていく、空。
「ここに、俺はいるのか?」
「刹那?」
「ここに、ティエリアは、いるのか?」
願いが暴走を始める前に、刹那は口元をマフラーで隠した。
全て捧げて、舞い降りた地。
闇を切る。
自分の、使命。
目を閉じた。
開けた世界には、自分以外のものがいる。
「ここに、俺はいるんだろうな」
呟いたティエリアの声に、刹那は泣きそうになった。
赤い世界に立つ、自分以外の存在。
「言葉では、言えない。言わない」
ティエリアは、答える。
それだけで、十分だった。
刹那は満足そうに苦笑する。
紛れ無くしたものも、消え行くとき。
それでも。
それでも。
それでも。
残るものは、ある。
業火を溶かし、現れる日に、貴方はいる。
貴方が、いれば良い。
「俺も、言えない。言わない」
そっとどこかで、火が消えた。
だけど、確かに感じる。
貴方の温もり。
鼓動。
これも、真実。
何よりも変えがたい、真実という名の現実。
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