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規則的な行動を好む彼のパターンを、電気信号のように繋げては途切れさせる。
それは故意的なものではなく、人為的なものという意味だ。
それほどまでに、彼は計算式が似合う存在だと認識にしていた。
「ティエリアは、数字に関しては強いほうか?」
「それは、俺が数字と戦って勝つかという、異次元の話をしているのか?」
「冗談にしては、笑えないな」
「同意見だ」
刹那の問いかけに、ティエリアは答えた。
お互いに裏で話が通じ合っていることが、それとなくわかる。
だからこそ、会話が途切れても不快感を感じない。
モニターに目を戻し、刹那は口を開いた。
「こういうのは、感覚が覚えている」
ガンダムのプログラミングに関しての論。
「まあ、慣れればどうとでもなるからな」
覚えていくことを求めていく存在としての論。
さても歯がゆい論述に、お互いため息をついた。
重なった。
だが、これは意識しての行為ではなかったので思わず目を合わせる。
「…刹那は、変わらないな」
「ティエリアは見た目も変わっていない」
「今まで言われなかった」
「誰も、言うほどのことではないと判断したんだ」
それは違う、とティエリアは知っていた。
自分でも認めている。
刹那は目に見えて成長が明らかだった。
しかし、自分は違った。
代わり映えのしない世界に、孤立しているのは自分だけである。
悔しさの反面、孤独を覚える。
忘れたと思っていた感情だった。
「どうした?」
不意に、刹那がティエリアの前に立つ。
彼は言う。
ティエリアは、口を開いた。
「なんでもない」
それきりだった。
眼鏡一枚分の、たったそれだけの壁がコンクリートに見える。
視界の全てをシャットアウト。
いつしか自分もその世界に取り込まれるのだと、暗示されているようで憎憎しい。
徐に、ティエリアは眼鏡を外した。
その視界にいたのは、真っ白な刹那だった。
「…変な顔をしているが」
首を傾げるティエリアに、刹那は無意識のうちに答えを探す。
「…素の顔を、こんなに近くで見たのは久しぶりだったから」
「ああ、いつもは外さないからな」
「戦闘中に見ても、可笑しい」
「そうか」
一枚の壁が、これほど威力を持つのか。
少しだけ、刹那に近づけたような気がしたティエリアはゆっくりと刹那を抱きしめた。
曇った声が聞える。
温度。
その温もりが、コンクリートさえも溶かしてしまうほど熱かった。
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