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⑨不倫?(×・家族)

魅上照は、検事をしている傍らで探偵としても働いていた。
元はと言えば、検事をしている間に知った様々な世の中の不条理ゆえ。
そして、検事と対する存在、弁護士を雇う人々の実態を知るためでもあった。
世の中で弁護士を頼る人々の多くが、情けないことにも離婚による慰謝料相談である。
不倫の話だって、勿論ある。
掴み所のない世の中になった。
魅上はため息をつきながら、カフェのテーブルで英字新聞をめくる。
今回の依頼人は、最近増えてきたストーカー調査。
検事として受け持っている事件の事を考えながら、魅上は今回のターゲットを見る。
ターゲットの名前は、火口。
彼自身は結婚とは程遠い生活をしているのだが、何せその生活が下劣すぎた。
どちらかといえば、火口は加害者の立場だろう。
世の中、腐ってきたものだ。
そんなことを魅上が思っている前で、火口は相変わらず女性を口説いて席を立とうとしない。
しばらくは暇だろうか。
空になったコーヒーの代わりを頼もうと、魅上はあたりを見回す。
すると、その視界に不意に知っている存在が飛び込んできた。

「あれ?魅上さん、お久しぶりです」

にこやかに笑う、彼の名前は夜神月。
以前、彼が裁判所に来たときに少し話したというそれだけの関係だ。
しかし、魅上は月に惚れていた。
魅上の思考をトレースしながらも、その上をいく月の思考。
そして何よりも、彼の美しさ。
美麗、とだけには収まらない。
魅上は笑顔を向ける月に、慌てて新聞を畳んだ。

「月さん、お久しぶりです」
「今日も事件の調査ですか?」
「ええ。あ、月さんもお座りになってください」

ご丁寧にも、魅上自身が立ち上がり月が座るための椅子を引く。
月はその動作に圧倒され、言われたとおりに腰掛けていた。
自分の隣に月が座っている。
その事実に喜びを感じていると、小さな存在が残っていた席を埋めた。

「月、こいつ誰?」

魅上は聞きなれない声にはっとする。
見れば、綺麗な金髪を持つ少年がチョコレートを食べながら月を見上げていた。
馴れ馴れしい態度だと魅上は眉を寄せるが、月は気にする様子もなく答える。

「魅上照さん。検事だよ」
「検事の方と、約束でもしていたんですか?」
「してないけど、久しぶりに会ったから」

別の声に月は答える。
見れば、金髪の少年の隣で、玩具をいじりながら淡々としている銀髪の少年がいた。
またも見慣れない少年である。
魅上が反応に困っていると、月が慌てて二人を紹介した。

「ニアとメロです」
「はあ…」

紹介されても、どうもピンと来ない。
魅上は曖昧に頷く。
弟にしては、外見が似ていない。
従兄弟だろうか。
しかし、二人とも外人に見える。
魅上が頭を悩ませていると、ニアが何でもないというように口を開いた。

「挨拶ぐらいに済ませないと、竜崎が怒りますよ」
「そうかな?」
「あいつにばれたら、浮気だー、不倫だーってどんどん話が進んでいくだろうなあ」
「すさまじいほどの妄想癖ですからね」

生憎、二人の言葉を笑い飛ばすことは出来なかった。
乾いた笑いに留め、月は誤魔化す。
竜崎ならばと考えると、恐ろしい。
下手をするとあいつはイギリスからでも正しく飛んでくる。
三人の様子に、魅上は首を傾げた。

「あの、月さん…」
「はい?」
「竜崎、とは誰ですか?」
「ああ、竜崎は…」

口を開いて、月は視線を彷徨わせる。
どこか言葉に悩んでいるという様子だった。
いつでも自信たっぷりに発言する彼らしくない。
魅上が不思議に思っていると、メロが代わりに口を開いた。

「竜崎は月の旦那」
「ついでに、私達の父親です」
「本当についでだよな」
「オマケですよね」
「二人とも…」

容赦の無い言葉に、月は呆れたように苦笑する。
一方、置き去りにされた魅上は言われた言葉に目を見開いていた。

「…旦那?父親?」
「それよりもー!早く帰ろうぜ」

会話を断ち切るようにメロが声を張り上げた。
ニアもそれに続く。

「そういえば、今日買った食材の中に生ものがありました」
「あ!」

ニアの一言に、慌てて月は立ち上がると買い物袋を持って立ち上がった。

「それじゃあ、また!」
「あ、はい」

魅上が反応を示す間もなく、三人は早々と帰路につく。
残された魅上は言われた言葉を再度考えながら、とりあえず近くにいたウエイトレスに代わりのコーヒーを注文した。

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