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夜中に目が覚めた。
何か予感。
虫の知らせのようで、どうも落ち着かない。
何よりも、一度覚めた目が珍しく再び閉じない。
ようするに眠れなくて少し手持ちぶさたなのだ。
静かに起床し、キッチンに向かう。
落ち着くためのホットミルクを作ろうと牛乳をマグカップに注いだ。
カタンと扉の開く音に振り向けば、綺麗な銀髪がドアノブに手を置いたままこちらを見ていた。
「月さん?」
「ニア」
「…起きていたんですか?」
「いや、少し目が覚めちゃって」
苦笑しながら、ニアを座るように促す。
そして、並んだマグカップからニアのものを取ると同じように牛乳を注いだ。
ニアは自分と好みが似ているので、蜂蜜などは入れずにそのまま電子レンジに入れた。
「ニアこそ、眠れないの?」
クルクルと淡い光に照らされ回るマグカップ。
時間を気にしながら、月は口を開く。
低血圧であるニアが寝て早々に起きるはずはない。
すると、今まで起きていたのだろう。
ニアは椅子に座り、玩具で遊んでいた手を止めた。
「はい」
「何か、悩み事?」
「ちょっと違います。考えたくて」
沈黙。
口を閉ざしたニアに、月は苦笑する。
そして、チンと音をたてた電子レンジからマグカップを二つ取り出した。
一つをニアの前に置き、月は向かい側に座る。
「熱いから、気をつけてね」
「はい」
湯気がたつ白い液体からは、特有の淡く優しい甘い匂い。
月はマグカップを両手で挟むように持ちながら、ニアへ微笑む。
「ニアが考え事なんて、珍しいね」
「考え事…」
「そこまで難しいパズルでもあった?」
「…難しいのは、パズルなんかじゃありません」
ニアはまた沈黙してしまう。
何処か意気消沈の様にも見えた。
月が言葉を探していると、ニアは不意に口を開く。
「誕生日でした」
「え?」
「つい一秒前まで、私の誕生日でした」
見れば、日付を超えたことを示す時計がある。
秒針は動いていた。
月は、自然と口を開く。
「あ、おめでとう」
「はい。…ありがとうございます」
どこか放心気味で言う月に、ニアは玩具を置いた。
そして、暖かいミルクに口を付ける。
淡い。
優しい味が喉を潤す。
思っていたよりも喉は乾くものだと実感した。
月もそんなニアを見ながら、ミルクを飲んだ。
「言ってくれれば、お祝いしたのに」
拗ねた口調の月に、ニアは目をぱちくりとさせる。
「お祝い?」
「うん」
「考えたことが無かったです」
ニアの素直な言葉に驚く月だが、これが今までの彼にとっては常識だったのだ。
月は小さく、笑う。
「じゃあ、来年」
今年は終わった。
だから、来年。
来年だったら忘れずに祝える。
月の言葉に、ニアは恥ずかしそうに俯いた。
「らいねん」
「うん。今年は出会った年だけど、だからこそ、来年はもっとニアを知った上で優しく祝えそうだから」
「来年も、一緒にいてくれるんですね」
ずっと。
出来れば、ずっと。
一緒にいて。
ニアは言う。
月は嬉しそうに笑って、知らずともニアの誕生日の最後を彼と過ごせて嬉しかったと思う。
月とニアは微笑み、どちらからともなくミルクに口付ける。
ミルクは、少し温くなっていた。
ニアハピバー。
リアルにお祝いが遅れました吐血。
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