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まって、まって、まって。
そんなつもりは微塵もなかったの。
どうすれば良いかわからなかったの。
もう、なんか、なんだかわかんないの。
「…ご、」
「良いよ」
ロックオンは笑った。
その頬には、赤い爪の痕がくっきりと残っている。
些細なことだった。
昼寝をしていた自分に、ロックオンは毛布をかけてくれただけだった。
それでも、戦場に身を置いている自分には刺激が強くて。
咄嗟に跳ね除けて。
何かを、ぶった。
気づけば、毛布を持ったまま床で腰を抜かしているロックオンの姿。
震える刹那に、ロックオンは苦笑した。
「俺、そんなに嫌われてる?」
「違う!」
咄嗟に刹那は立ち上がった。
ああ、でも、でも。
言葉が見つからない。
俯いた刹那に、ロックオンは頬を撫でながら近づいた。
手を見れば、血が滲んでいた。
「じゃあ、謝る前に爪切ること」
「…うん」
「そんで、俺を見ること」
「…うん」
「顔上げろ」
「嫌だ」
「刹那」
この子は全く、自分勝手じゃなんだから。
少し、拗ねているだけ。
少し、訳がわからなくなっているだけ。
箱から飛び出した金魚は、空気を吸えなくてもがくように。
この子も、ちょっと自分の考えから飛び出しただけ。
ロックオンは苦笑した。
「俺は、大丈夫だ」
「でも、血が滲んでいる」
「ああ、傷なんて男の勲章だろ?」
「情けない、勲章だ」
「ははっ、確かにな」
油断していたとはいえ、刹那からの攻撃を避けられなかったのだから。
ロックオンは笑って毛布を広げた。
そして、ソファに座る。
首を傾げる刹那に、ロックオンはあいている隣を叩いた。
「座れと?」
「良くお分かりで」
舌打ち。
よく聞こえてますよ、刹那。
なんて、ロックオンは刹那の姿にただ笑う。
そして、近くにある刹那の手を引いた。
「ほら、眠れ」
「なんで」
「眠かったから、寝てたんだろ?」
「もう、眠くない」
「じゃあ、俺が寝るから」
「俺は出て行く」
「ああ、傷が痛むな」
「…ロックオン」
「あらら、可愛い顔が台無し」
睨んでくる刹那の瞼にキスを落とし、ロックオンは刹那の肩にもたれかかった。
そして、広げた毛布で二人をくるむ。
暖かかった。
刹那はどうやって逃げようか視線を彷徨わせる。
だが、やがて聞こえてきた寝息に小さくため息をついた。
どうせ、自分は飼われた人魚。
真っ赤なマフラー。
頬に走る、真っ赤な血の痕。
真っ赤な、真っ赤な、糸で紡がれた。
カミサマ。
オキルノヲマッテ。
ワタシタチヨゴトナンシュウモカガミノナカ。
クルクルクルクル。
戦場という箱の中で、泳いでいるのだから。
せめてこの一時だけは、自由にさせて。
起きるのを待って。
もう、なんか、なんだか眠りたいよ。
血の色。
永遠は無いよ。
でも、この温もりは。
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