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少し、黙りすぎる。
少し、静かすぎる。
だから、わからなくなる。
ティエリアは缶を一つアレルヤに投げた。
空中をふわふわと浮き、缶はアレルヤの手にすっぽりと収まる。
「コーヒー?」
「間違えて買っただけだ」
「そっか」
アレルヤはクスクスと笑う。
ブラックコーヒーが飲めないのに虚勢をはるような態度。
そんなティエリアが面白くて。
愛しくて。
「お前、頬が赤いぞ?」
不意の言葉に、アレルヤは苦笑した。
「ああ、さっきまでスメラギさんのところで飲んでたからかな?」
「お前、飲めるのか?」
スメラギといえば、いつもお酒を飲んでいる。
問うティエリアに、アレルヤは頷いた。
「飲めるよ」
「苦くないか?あれ」
「ん、そっちで聞いてきたの?」
「何がだ?」
「年齢を聞いてきたのかと…」
「…そういえば、未成年だった。お前、無謀なことを」
規則に厳しいティエリアは途端に顔を険しくさせる。
そして、アレルヤの手から缶コーヒーを奪いとった。
「あ」
「没収だ」
「何で?」
「規則を破ったお前にはやらない。ロックオンにでも…」
「今日で、一応、二十歳なんだけど」
「…は?」
背を向けようとしていたティエリアは突然のことに目をぱちくりとさせる。
何を言うかと思えば。
その気の抜けたような顔が面白くて。
アレルヤはまた笑ってしまった。
「誕生日」
「あ、ああ、そういうことなら」
ティエリアは缶コーヒーをアレルヤの手の中に戻す。
アレルヤはまだ暖かいコーヒーを持って、苦笑した。
「これも、嬉しいんだけどなあ」
「だけど?」
「ううん」
首を振ったアレルヤに、ティエリアは仕方がないと小さくため息をついた。
「誕生日おめでとう、アレルヤ」
たった一言に無邪気に笑うアレルヤ。
その笑顔は、とても愛しくて。
とても、わからなくて。
でも、ただ、今はここにいる。
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