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大人になると、言えない一言がある。
昔は、幼馴染に良く言っていたかもしれない。
それでも、気づくのが遅くて。
彼が誰かのものになりそうになった時に、ようやく気づく自分。
「好き…」
「何がだ?」
「あ、ううん。なんでもない」
ティエリアの眼鏡越しの瞳に、アレルヤは笑った。
アレルヤの笑顔はいつでも穏やかである。
もう一人の人格とは、程遠い。
それを知らないティエリアは、いつものアレルヤを傍においていた。
「いえないひとこと」
「アレルヤ、どうした?」
「ううん。ティエリアに、出会う前に思ったこと」
アレルヤは苦笑する。
言えない。
言いたい。
でも、気づくのが遅すぎた。
ティエリアは今、マイスターの仲間としてここにいる。
でも、マイスターでなければ出会うことはなかった。
出会えたから。
言いたい、一言。
「ねえ、ティエリア」
「だから、さっきから…」
「あの、好き」
「…何が?」
「ティエリア、が」
赤面するアレルヤに数秒遅れ、ティエリアも頬を染める。
一体こいつは何を言い出す。
眼鏡をなおしながら、ティエリアは小さくため息をついた。
「言えないんじゃなかったのか?」
「言えると思って」
「何で?」
「過去を変えることは出来ないけど、未来なら、今なら、変えられると思ったから」
だから、たった今。
自分で変えてみた。
「ティエリアに、好きって言おうと思ったんだ」
照れくさそうに笑うアレルヤにティエリアは視線を背ける。
「ティエリア?」
顔を覗き込んでくるアレルヤに雑誌を叩きつけ、ティエリアは小さくため息をついた。
なんで、こんなに正直に言える。
大人になったのに。
成長したから、言えない言葉も増えたのに。
まだ、無邪気だから。
子供だから言えるというのか。
「…少し、黙っていろ」
あと少し。
考えれば、きっと素直になれるから。
ティエリアは赤い顔で小さく呟いた。
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