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落ちる。
落ちる。
落ちる。
ポタポタと点滴が栄養を体の中に運び込む。
生きている。
刹那はゆっくりと目を開けた。
左腕に刺さる針からは、栄養が供給されている。
ああ、自分の体はこんなにも。
刹那は強く手を握りしめた。
太い血管に刺さる針がそれ以上の抵抗を許さなかった。
刹那は手を握る。
強く。
爪が手に食い込むように。
ふと、その皮肉な手を誰かが突っついた。
「刹那ー、血、出るぞ?」
「構わない」
「いやいや」
苦笑するロックオン。
ロックオンは刹那の指をゆっくりと解放していく。
頑固に握り締められた手。
しかし、ロックオンは飽きずに刹那の手を構う。
自分よりも年下の少年は、柔らかい手を持っていた。
これが自分と同じように戦う指かと内心驚く。
「…ロックオン」
「どした?」
「手が、冷たい」
「あ、ああ。刹那は暖かい布団の中だもんな」
普段はロックオンの方が手が暖かいのに。
その温もりを知る刹那は、ゆっくりと自ら指を開いた。
ロックオンの手を握り締めた。
「…冷たい」
「冷たい俺の手は嫌いか?」
刹那は無言で瞳を伏せる。
刹那なりの愛情表現にロックオンは笑った。
「そっか」
「冷たい。離せ」
「嫌」
「ロックオン」
「呼んで?」
「え?」
「もっと、俺の名前を呼んで」
そうしたら、離してあげよう。
不敵に笑うロックオンに刹那は眉を寄せる。
口数は少なくとも、彼は表現が豊かだ。
ロックオンは刹那の髪を労るように撫でた。
「貧血で倒れたんだってな」
「情けない」
「ああ」
最近の活動に刹那の体は悲鳴をあげていたのだろう。
悔しげな刹那にロックオンは言葉を続けた。
「毎日、見てたつもりなのに」
「何をだ?」
「刹那」
「え?」
「毎日、毎日、見てたはずなのに、こんな思いさせたな」
ロックオンは苦笑した。
慈しむように。
愛するように。
何よりも愛しいとロックオンは刹那の手を握りしめた。
「呼んで」
「ロックオン…」
「もっと、刹那を俺に見させて」
「…嫌だ」
「…殺生な」
「嫌だ」
「刹那」
小さくため息を零すロックオン。
刹那はそれを聞くと、ロックオンの手を握り返した。
「呼べ」
「え?」
「俺が、眠るまで…」
ポタポタと点滴は落ちる。
過ぎる時間を告げるように。
中身が空っぽになっていく。
それでも。
「刹那」
響いた愛しい声は止まない。
◆こんな感じですか?あれ?←
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