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仄かな明かりが見えた。
刹那はゆっくりと体を起こす。
その隣で、ティエリアも眼鏡をかけていた。
朝日が、ティエリアの眼鏡に反射した。
「朝日…?」
「違うな、初日の出だ」
地球時間では、もう一年が過ぎた。
ティエリアの言葉に、刹那はもうそんな時期なのかと頷く。
寒い空気が、二人の体を冷やしていった。
刹那は寒そうに、手を合わせる。
それを見て、ティエリアが刹那の手に毛布をかけてやった。
「寒いんだろ?」
「寒くない」
「鼻が赤い」
「煩い」
そっぽを向く刹那に、ティエリアはため息を零す。
「今年は、どんな年になるんだろうな」
去年はどんな年だったのだろう。
不意に思い、言葉につまる。
ティエリアの瞳は、それでも朝日を見つめていた。
綺麗だった。
今年初めて見る日の出を、二人で見れて幸せだと思う。
「春になれば、刹那の誕生日だ」
「ティエリアの誕生日は?」
「さあな」
そんなもの、知らない。
ティエリアは平然と答える。
そして、おもむろに立ち上がるとカーテンを全開にした。
朝日が部屋中を照らし出す。
とても美しい光景だった。
ティエリアの端正な顔に、朝日が影を作り出していた。
刹那は思わず見とれながら、ティエリアに手を伸ばす。
その手をティエリアは何も言わずに握り締めた。
「ティエリアの目は、赤い」
「刹那の目も、だ。ああ、でも、俺よりも赤みが強いな」
刹那の目は、赤というよりは紅に近かった。
ティエリアは、純粋な赤の瞳で刹那を見る。
朝日に似ていた。
刹那は、ティエリアの端正な手を握り返し苦笑した。
「ティエリアの目は、透き通っていて、朝日みたいだ」
綺麗。
綺麗。
「ティエリアは、朝日だ」
「それはないな」
「俺が、そう思っただけだ」
嫌味が無くて。
ただ、純粋で。
そんなティエリアが好きだった。
「今年も、俺の傍にいるのか?」
「それは、お前が決めろ」
ただ。
「俺からも聞かせてくれ。お前は、今年も俺の傍にいるのか?」
「知らない」
きっと、傍にいる。
二人の手は、朝日の中で繋がれたままだった。
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