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雨が降った。
お前と俺の間に、雨が降った。
ロックオンは刹那の後姿に口を開く。
「過去を、思い出したか?」
「俺の故郷が、何だ」
「いや、別に」
気にしていない。
刹那は言う。
しかし、彼の瞳は普段の彼のものではなかった。
ロックオンはため息をつきつつ、刹那の後姿を見る。
華奢な背中。
ああ、そういえば昔から中東は戦争地域だった。
彼の背中にも傷があるのだろうか。
彼の心にも、傷はあるのだろう。
くだらないことを思った。
「無茶はすんなよ」
「誰に言っている」
「刹那」
「…どうして」
「アザディスタンのこと、気にしてる?」
「違う」
いや、違う。
刹那が気にしているのは。
「自分の過去、気にしてる?」
「…違う」
刹那は首を横に振り、ジャケットを羽織った。
普段の私服ではないけれど、私服をきた彼がいる。
中東に生きていれば、彼はこうして生活をしていたのだろうか。
ソレスタルビーイングと関わることもなく。
戦争と関わることもなく。
いや、それでも。
彼は闘争の中にいただろう。
「頭にその長いの巻くの?」
「一応、な」
包帯のような、マフラーのような、ターバン。
真っ白。
その片方をロックオンはつかみ、刹那を手繰り寄せた。
刹那は不機嫌そうに片目を上げる。
「何だ」
「いや」
何でもない。
ロックオンは刹那に口付けた。
甘い匂いがしたような、そんな、幻想を見た。
「無事に帰れよ」
「当然だ」
「…過去から」
「しつこい」
でも、ロックオンの言葉は適切だ。
刹那は口付けに口付けで返す。
そして、ロックオンの手を振り払った。
懐かしい故郷。
自分の過去を、含んだこの地で。
自分は一体、何を見るのだろうか。
何を、感じるのだろうか。
今はただ、この温もりに体を委ねていたかった。
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