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それだけ。(×・L月)

きっと貴方を嫌いだと、信じて疑いもしなかった。
そんな自分に後悔した。
さようなら。
さようなら。
相手は貴方ではなく、正しく自分。
さようなら、何回言えば届くのかと便箋に綴った。
頭が痛い。
誰かの腕の中にすっぽりと収まって、寝てしまいたい感情が降り積もる。
言葉は限りなく、二人を責め立てる。
どうしたの。
何があったの。
答える自信さえない自分に気づいた。
惨めだった。

「泣か、ないで、ください」

ポツリ、小さく呟かれた。
愛用のシャーペンが指の隙間から抜けた。
月は振り向く。

「…誰、が、」
「貴方が、です」

下手な言い方しか出来なくてすみません。
でも、これ以上の言葉を私は知らない。
今まで抱いたこともなかった。
竜崎の告白に、月は笑った。

「そうか。僕が、泣いているのか」

涙に掠れる声が事実を告げる。
認めるのは悔しかったけれど、知らない、どす黒い感情が胸を満たしていく。
ああ、涙が流れた。

「気づかなかった」

頬に手を当てると、冷たい水滴がしっとりと指に触れた。

「気づいてください。ただでさえ、貴方は、月君はきっと、全てを騙してしまう」
「君を、竜崎を?」
「きっと。そして、自身さえも騙して、」
「それが、何だ」

誤魔化して、頑張って。
多少の無理をしても認める結果が得られれば良い。

「寂しいことですね」
「誰が…」
「私が、寂しいです」

こうして傍にいるのに。
お互いに望めば手が届くのに。
竜崎の言葉が、月と共鳴する。
それは。

「違う。寂しいのは、僕、」

続けられなかった。
心のアラームが赤に変わる。
警報が鳴り響く。
月は言葉を飲み込んだ。
代わりに、また涙が流れた。
竜崎は滴を拭うように月を抱きしめ、指を伸ばした。
首筋にキスが一つ。
寂しいのはお互い様。
この関係が崩れるまでは、心の鎖が壊れない。

「早く、声が聞きたいです」

答えず、月は竜崎の腕にそっと触れた。
今は、まだ、この距離で。

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