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オレンジ。(×・L月)

知っていますか。
それは唐突と呼ぶほどに、他の例えを持たなく発せられた。

「は?」

第一声。
一言と片付けても文句の理由がない。
当初から言動の持つ意味がわからず、はたしてその言動自体が答えを求めるものであり、回答者が答えを出すのは無意味にも等しいことだろう。
眉を寄せる月に、あからさまに落胆してみせる竜崎。
しかし、求めずともヒントは軽快な音楽と共に光を灯した。

「ハロウィン、か」
「月君…!テレパシー、」
「じゃないから。表の店が看板を出してるんだよ」

竜崎が特に気に入っているケーキ屋は、本部の目の前にあった。
午前を告げる合図。
カボチャがランタンとなり、日光に負けじと光る。
月の指差した方向に対し、竜崎はため息をついた。

「そういうもんだって」

何をされても、言われても、出来ないことは出来ないわ。
カボチャが月の言葉を代弁するように、自動ドアの運動と同時に笑った。
竜崎は恨めしそうにカボチャを見る。
カボチャは平然と声高々に笑うばかり。
貴方は拗ねるのね。
泣いちゃうのかしら。
隣のカボチャは笑っているわ。
カボチャ同士でぶつかっては笑い声。

「…拗ねる理由もないです」

竜崎は呟くが、やはり月には唐突すぎて理解出来なかった。
月は店を見る。
目に入るのは、見てくれと言わんばかりに飾り立てられたカボチャ、ガラスケースに入るカボチャ、アンティークのカボチャ。
甘いものが好きではない月からすれば、カボチャを宣伝する日なのかと思ってしまう。
しかも、日本のカボチャではなく西洋カボチャの祭りにしか見えない。

「そういえば、カボチャのケーキが増えたな」
「はい。見える限りでホールケーキが二つ、カップが三つ、プリンが一つ増えています」
「…どれが食べたいんだ?」
「全部、ですね」

甘味で死にそうである。
が、これは竜崎のいつもの言動であるので、月は深く考えずにポケットに手を入れた。
相変わらずケーキ屋に目を奪われている竜崎に、月は何気なく小指ほどの袋を渡す。

「これは…チョコレート?」
「大学で貰ったんだ。今日はそれで我慢して、明日にでも松田さんにケーキを買って来てもらえ」

可愛らしい絵柄のついた袋には、小さなチョコレートの粒がオレンジ色を宿して並んでいた。
竜崎は目をぱちくりとさせ、月へと視線を向ける。

「月君…」
「なんだ?」
「口移しとか」
「チョコレート、返してもらおうか?」

月の笑顔に、竜崎はチョコレートを強く握りしめる。
今だけは、普段は固いと感じるほどの形態維持をするチョコレートに感謝してしまった。

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