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お前を、貴方を、愛していたと言えたのならばと仮定した。
どれだけ、どれ程、幸せだっただろうかと想像した。
気づかない言葉に蓋をして、強く深く押し込めたら、空に浮かぶ褐色の球体のように形容出来なくなり、手も届かなくなった。
気づかない、というのは嘘である。
気づいたから、気づかないと自分の中で修正液を振り回したに過ぎず、空っぽの容器を何処に棄てるべきか迷った。
恨み言は言わないと決めた。
妬みなんてないと思い込んだ。
切り捨てた爪の様に、パチリパチリと優雅の欠片もなく切り捨てたそれ。
夜中に爪を切ると大切な人の死に目に会えない、と迷信を笑い飛ばした彼を思い出す。
食い込み、赤々とした液体を滴らせた爪は、体温を感じない指先から落ちる。
「ああ、馬鹿だなあ」
幻聴。
幻覚。
幻想。
「ああ、馬鹿だなあ」と、笑って欲しい。
くだらない。
冷静だと自負している自分には似合わない滑稽な願い。
ティエリアは、笑った。
「…誰のせいだ」
床に広がる赤い液体に、涙が混ざる。
紫色を滑り落ちて、滴は跳ねた。
「…誰のせいだ。ロックオン」
ティエリアの責める声に、もう洒落は返ってこない。
画面の向こうから機体が近づいてくる様子が伺えた。
心で否定した。
お前に、貴方に、触れた指先は失った。
次は何を棄てれば良いのか失った。
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