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髪を撫でて。
ゆっくり、ゆっくり。
誰にも気づかれないように。
自分さえも忘れるほどに。
撫でて。
「俺は何でこうしているんだろうな」
「ティエリアにもわからないことがあるの?」
「不満か?」
「ううん」
可愛いなあって、思っただけ。
愛しさがほんの少し、増しただけ。
アレルヤは、ふにゃりと笑う。
優しい笑顔だった。
暖めるようにティエリアの端正な指がアレルヤの髪を撫でる。
片手には本。
片手にはアレルヤ。
「僕たちは、いつまでいられるんだろう」
愛し合っていられるだろう。
愛する意味を知っていられるだろう。
アレルヤはことんと、ティエリアの肩に頭を乗せた。
「せめて、美しい夢だけを」
ずっと。
ずっと。
見ていられたら良いのに。
アレルヤの呟きにティエリアは本を閉じた。
「目を見よう」
「え?」
「目を見て、話せ」
これからの事を。
今までの事を。
きっと、覚悟している。
冷たい指先だったけれど、ティエリアの存在は暖かくて。
握りしめると答えてくれることが何よりも嬉しくて。
はにかんだ、アレルヤ。
「ううん。我が儘だけど、このままが良い」
「我が儘だな」
「それでも、傍にいてくれるんだね」
笑ったアレルヤに、ティエリアはため息を一つ零した。
「それでも、痛みさえも分かち合わない」
「分かち合いたくないよ。でも、傍にいるよ」
「どこまでも?」
「だから、ついていくんだよ。決めたんだ」
「しつこいのは嫌いだ」
「嘘。ティエリアらしくない」
ああ、きっと。
素直じゃないのはお互い様。
心の傷跡をなぞった。
どんな闇の中でも、きっと。
素直じゃないのは。
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