忍者ブログ

[PR]

×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

なでて。(○・アレティエ)

髪を撫でて。
ゆっくり、ゆっくり。
誰にも気づかれないように。
自分さえも忘れるほどに。
撫でて。

「俺は何でこうしているんだろうな」
「ティエリアにもわからないことがあるの?」
「不満か?」
「ううん」

可愛いなあって、思っただけ。
愛しさがほんの少し、増しただけ。
アレルヤは、ふにゃりと笑う。
優しい笑顔だった。
暖めるようにティエリアの端正な指がアレルヤの髪を撫でる。
片手には本。
片手にはアレルヤ。

「僕たちは、いつまでいられるんだろう」

愛し合っていられるだろう。
愛する意味を知っていられるだろう。
アレルヤはことんと、ティエリアの肩に頭を乗せた。

「せめて、美しい夢だけを」

ずっと。
ずっと。
見ていられたら良いのに。
アレルヤの呟きにティエリアは本を閉じた。

「目を見よう」
「え?」
「目を見て、話せ」

これからの事を。
今までの事を。
きっと、覚悟している。
冷たい指先だったけれど、ティエリアの存在は暖かくて。
握りしめると答えてくれることが何よりも嬉しくて。
はにかんだ、アレルヤ。

「ううん。我が儘だけど、このままが良い」
「我が儘だな」
「それでも、傍にいてくれるんだね」

笑ったアレルヤに、ティエリアはため息を一つ零した。

「それでも、痛みさえも分かち合わない」
「分かち合いたくないよ。でも、傍にいるよ」
「どこまでも?」
「だから、ついていくんだよ。決めたんだ」
「しつこいのは嫌いだ」
「嘘。ティエリアらしくない」

ああ、きっと。
素直じゃないのはお互い様。
心の傷跡をなぞった。
どんな闇の中でも、きっと。
素直じゃないのは。

PR

Comment

お名前
タイトル
E-MAIL
URL
コメント
パスワード

Trackback

この記事にトラックバックする:

Copyright © カカライズ : All rights reserved

「カカライズ」に掲載されている文章・画像・その他すべての無断転載・無断掲載を禁止します。

TemplateDesign by KARMA7
忍者ブログ [PR]