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端的に言葉を発するということは、お互いに損得の生じない最短の手順であった。
だが、ここにきて刹那は壁にぶち当たる。
要するに、物理的なものではなく心理的なものだ。
「た…」
どうやら、心理的な要因は体さえも支配したらしい。
鈍くなった動作と錆びて回転の減少を告げる頭に痛みが走る。
壁を殴り付けたくなったが、辞めた。
いや、そもそもこんな行動は自分に似合わないのだとマインドコントロールに思考を移す。
目の前のドアが開いた。
「何をしている、刹那」
「…マインドコントロールについて考えていたところだ」
「ならば自室でやれ。先程から気配が煩い」
「そうだな」
端的。
単純。
一言。
刹那は言葉につまり、俯く。
それを見越したように、ティエリアは小さくため息をつき成長したとはいえど小さな刹那の頭に触れた。
掠める程度の、軽い慰めにも似ていた。
ティエリアは刹那に早々と背を向ける。
遠ざかる足音を耳にし、刹那は咄嗟に振り向いた。
「誕生日」
ティエリアが足を止める。
刹那は先程ティエリアに撫でられた頭を熱く感じた。
小さく、刹那が続きを言うために口を開く。
「…なんだろ」
「不確定な話だ」
「風の噂で聞いた」
「そうか。で?」
「おめでとう」
端的。
単純。
一言。
刹那は言う。
それだけに、刹那は早々と立ち去った。
残されたティエリアは小さく苦笑した。
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